【 自然に輪がうまれる「家のような空間を」 】
起業家紹介:本橋香里さん(カフェ藤香想)
しばし日常を忘れ、ほっと一息つける空間を要町でみつけました。
カフェ「藤香想」。
駅近くの商店街から路地に入り、
緑に包まれた小路を進んだ先にある、落ち着いた佇まいの一軒です。
築63年の木造家屋が醸し出す温かみ。
窓からはやわらかな陽光が差し込み、草花が四季折々の表情をのぞかせる。
自然と調和した空間は“中にいるのに外にいる”、
そんな不思議な感覚とともに、私たちを日々の気ぜわしさから開放してくれます。
「もともと家に人を招いてふるまうのが好きなんです。
冷蔵庫にあるものでさっと一品作って、みんなでお酒を飲むのが好きですね。」
カウンターに立つのは店主の本橋香里(もとはし・かおり)さんです。
自然体であたたかい本橋さんのおもてなしもまた、藤香想の居心地のよさのひとつ。
お客さんから人生相談をされたり、結婚の報告に訪れてくれたりといった
微笑ましいエピソードにも頷けます。
メニューは新鮮な海の幸や上質なお肉を使った丼、珈琲、日本産の茶葉を使った「和紅茶」などが並ぶ。
“自然とみんなが集う空間”ですごした子供時代
本橋さんはここ要町で生まれ、子供の頃は両親と弟、祖父母、曽祖母と一緒に暮らしました。
その当時の日常空間が、「藤香想」の根底にあるといいます。
「4世代同居だったので、いつも祖父の友達が来て将棋を指していたり、
祖母のお茶仲間がいたり、父の兄弟や近所の親戚がいたり・・・
人の出入りが絶えない家庭でした。思い返せばそういう空間にいることが私自身幸せだったし、
大人たちにとってのいい環境だなぁと子供ながらに見ていたんでしょうね。
それが根本にあって、年とともに自分で何かやろうという思いがふつふつとわいてきたとき、
自分が本当にやりたいものを模索したら『人々がたわいもなく集まる場』を
つくりたいと思ったんです。」
― お客さんがふらりと集い、自然な輪が生まれる「家」のような空間をつくりたい。
その思いを後押ししてくれたのが、現在の店舗である60年以上の歴史を持つ要町の古民家でした。
「これだけの緑があり、庭があり、さらには歴史もある。ちょうどここが空いていると知ったとき、
この空間を活かしながら残していきたい、要町にこんないいところがあることを
みんなで共有したいと思いました。私の先祖は富士塚を守る富士講の先達(リーダー)として
まちの人を束ね歴史を守っていたんですが、私も自分のできる形で
町の人たちと一緒に何かをしてみたいと思ったんです。」
それから古民家カフェの実現にむけて家屋の改修や準備に取り組み、2015年2月にオープン。
この地に住んでいた方が藤を栽培していたことから「藤香想」と名付けました。
広がる発想、広がる人の輪。
「ここはレストランでも食堂でもなく、集う家。どんな場所にもなり得る自由空間です。
そこにみなさんがそれぞれの目的で集い過ごしていただくことが理想で、
私はそれに対してただ誠心誠意尽くしていくのみです。」
そのきっかけづくりとして、本橋さんは古民家空間と調和したコンサートや美術展、
そば打ち教室、テーマをもとに自分の思いを自由に話し合う「哲学カフェ」などを企画し、
枠にはまらない自由な空間を提供しています。
またお客さん自ら、プロのミュージシャンのライブをプレゼントしてくれたり、
藤香想のイメージソングを作ってくれたりと、藤香想にはたくさんのあたたかい物語が生まれ、
自然な人の輪が広がっています。
食を通じて地域の輪も広げたい
本橋さんの夢はさらに膨らみます。
「今後は食も追求していきたいと思っています。人が集まるところには、美味しいものが必要。
食べ物を介したコミュニケーションが必要で、そこはカフェの役割ですよね。
知人の農家の方々と協力しながら一緒に畑で野菜を育てて、
一から食に取り組んでみたいと思っているんです。」
・・また新たな人の輪が広がりそうですね!
やりたいことが山のようにあって話がまとまりませんね、と笑う本橋さん。
いえ、真摯に自分の「好き」と向き合い思いを形にかえていく。
そのたくましさと行動力には揺るぎない一本の筋が通っています!
次は藤香想からどんな物語が生まれるのでしょう・・楽しみでなりません!
(インタビュー・記事:島 永吏子)
<としまビジネスサポートセンターご利用内容>
・創業時の立上げサポート
・起業後の各種運営相談
・セミナー、勉強会へのご参加
としまビジサポは、本橋さんのチャレンジをこれからも応援し続けます。